「伊勢麻振興協会」と「白川郷」が大麻草で連携

白川郷

神社の関係者らで結成された「伊勢麻振興協会」(三重県伊勢市)と、世界遺産登録の合掌造り集落・白川郷(岐阜県白川村)がつながりを強めている。

合掌造り家屋のかやぶき屋根の軒下で使われている麻幹(おがら)は、麻の茎の芯の部分にあたる。白川郷で使われる麻幹は、岐阜県内での生産が中心だが、その量は不足している。不足分は、1940年代ごろに生産された麻幹で状態の良いものを再利用したり、栃木県産を使ったりして補っている。
白川郷田島家養蚕展示館長の三島敏樹さんは、「建築物の改修には、どの国の世界遺産も地場の建材を使っている。合掌造り白川郷もそうあるべきだと」と主張する。
麻とは大麻草のことで、伊勢麻振興協会は2018年度、麻でつくる繊維「精麻(せいま)」の生産を三重県に許可されている。
そこで、合掌造り家屋に使われる麻幹の原料となる麻栽培の技術指導に乗り出した。

禁止薬物のイメージが強い大麻草だが、厚生労働省によると、丈夫な繊維が取れるため、古くから日本各地で生産されてきた。第2次世界大戦後に連合国軍総司令部(GHQ)の指摘で全面禁止されたが、農家保護のために大麻取締法が制定され、免許制になった。ピーク時の54年に3万7313人いた生産者は、化学繊維の台頭などから激減し、2017年12月末時点で、12道県の34人にまで衰退した。

こうした危機感から、14年に設立されたのが「『伊勢麻』振興協会」だ。白川村の関係者から不足の窮状を聞かされた協会は18年、国内の産地で3年間の研修を積んでノウハウを蓄積した農家を岐阜県内に派遣し、より質の高い麻を栽培できるよう技術指導するようになった。
協会理事を務める皇学館大の新田均教授(神道学)は「合掌造り集落と神道行事は分野こそ違うが、ともに未来永劫(えいごう)、伝承させる必要がある文化。お互いに麻が欠かせない要素だけに、連携しようと考えた」と話す。三島さんは「大切な日本の文化を絶やすわけにはいかない。伊勢からのアプローチはありがたかった」と感謝する。

大麻草の生産には非常に厳しい制約があり、都道府県の許可を得なければ栽培できない。現在、三重県で生産が許可されているのは精麻の部分だけだ。岐阜県で認められているのは麻幹だけで、両県とも許可されている部分以外は廃棄するよう定めている。しかも精麻と麻幹は、生産したそれぞれの県内でしか使うことが許されていない。
新田教授は「精麻、麻幹とも有毒性はなく、日本の伝統文化に欠かせない貴重な存在だ。それぞれの県で捨ててしまっている部分を相互に融通しあえるよう、行政に働きかけていきたい」と話している。

出典:朝日新聞(2019年11月5日)
https://www.asahi.com/articles/ASMBD5DJQMBDONFB010.html




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