三重「伊勢麻」規制緩和で神事用大麻復権の期待が高まる

伊勢麻

幻覚成分をほとんど含まない品種「とちぎしろ」を生産する三重県内唯一の生産法人、株式会社「伊勢麻」(南伊勢町)。
その栽培や出荷はこれまで県から厳しく規制されてきたが、神事用の大麻の生産をめぐり栽培規制が大幅に緩和され、生産拡大に道が開かれた。

麻職人の谷川原健さんは「これまで栽培者には診断書が必要と言われ、畑には柵やカメラの設置が義務付けられ、栽培をすることが犯罪行為であるかのようで悔しい思いをしてきた」という。

大麻の栽培規制の潮目が変わったのは昨年9月。
コロナ禍で祭りや神事が中止となる状況の中で、厚労省は「国産大麻繊維を使用する伝統文化の存続、栽培技術の継承などが課題になっている」として、規制を緩めるよう各都道府県に通知した。

厚労省は、来年の通常国会にも大麻取締法などの改正案を提出し、乱用に関する「使用罪」を設けると共に、大麻繊維の伝統的な活用や大麻成分の医療用の活用を推進する考えだ。

有識者らでつくる「伊勢麻振興協会」理事の新田均・皇学館大教授(神道学)は「国産大麻の安全性に関する誤解が解かれ、日本人の衣食住を支えてきた麻の復権につながり用途が広がれば、南勢地域の有力な作物になり得る」と期待を込める。

大麻の茎の表皮は乾燥や発酵などの工程を経ることによって「精麻」(せいま)になり、芯の部分は「麻幹(おがら)」になる。
精麻は神事で広く使われ、高級織物や大相撲の横綱の綱などにの原料として使用される。
麻幹は合掌造りで知られる岐阜の集落・白川郷などでかやぶき屋根の下地に使われてきた。

出典: 2022.8.12 朝日新聞

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