究極の自由民が理想郷の実現を目指したヒッピー文化(2)

ヒッピー文化の最高潮「ウッドストック・フェスティバル」

ヒッピー文化の最高潮にあたる1969年に行われた伝説的な野外コンサートが、ウッドストック・フェスティバルです。1969年8月15日から17日にかけての3日間、アメリカ合衆国ニューヨーク州ウッドストックで開かれました。観客はヒッピーたちははじめ40万人にも上り、その後の大規模な野外フェスティバルの先駆けとなります。
30組以上のロック・バンドや、フォークアーティストが出演し、その中にはボブ・ディランやジミ・ヘンドリックスやジャニス・ジョップリンもいました。サイケデリックロックのムーブメントの真っ最中で、ジミ・ヘンドリックスはアメリカ国家を演奏した後に、ギターに火をつけるという印象的なパフォーマンスを見せつけました。
ウッドストック・フェスティバルは、既存の体制に反発したカウンターカルチャーの集大成として認知されています。ヒッピーが目指した「ラブ&ピース」の自然回帰運動の一環であり、愛と平和を掲げたフェスティバルでした。
このフェスティバルでは暴力事件などは起きず、大変な雨に見舞われた中で、人々はパンとアルコールとドラッグを分け与えあったと言われています。フェスティバル自体は赤字になりましたが、その後の音源や映画で黒字になりました。

ヒッピーの理想郷「テイラーキャンプ」

テイラーキャンプ

ヒッピーは現代の決められたルールの中で生きることに反発し、文明以前の原始生活に回帰しようとしました。その当時、ヒッピーの中でも究極の理想郷と言われていたのが「テイラーキャンプ」です。
テイラーキャンプにはルールもお金もなく、着る服も自由で着用しなくても大丈夫でした。
テイラーキャンプは、まさにヒッピー文化の最高潮にあたる1969年に、大学紛争を避けてアメリカ本土からハワイのカウアイ島で暮らし始めた13人から始まります。
お金も家もなかった彼らにカウアイ島の邸宅を与えたのは、女優のエリザベス・テイラーの兄、ハワード・テイラーでした。テイラーはお金に興味ない彼らに無償でこの土地を与えました。
彼らは指導者のいない理想郷をこの土地に作り上げました。自然の木から家を作り、裸同然の恰好で愛と平和の日々を過ごしたのです。その内多くのヒッピーたちがこの島に移り住みました。
しかし社会的な生活をする住民たちとのトラブルが相次ぎ、1977年ごろにテイラーキャンプは壊されてしまいます。テイラーキャンプの破壊が、ヒッピーの最終的な終焉といってもいいかもしれません。

ヒッピーの衰退

1960年代はまさに今までの世界の既成概念を崩す革命的な10年でした。
しかし1970年代に入ると、ヒッピーは長髪を切って社会に戻っていきます。
なぜヒッピー・ムーブメントは一過性のもので終わってしまったのでしょうか?
原因はさまざまありますが、反戦運動や学生運動が激しくなっていく中、死者が増えていくものの、一向に体制を崩すことができなかった点にあります。
またカルト化したコミューンも増えてきたり、戦いを嫌がってハワイへ理想郷を求めていった有名なテイラーキャンプなどのコミューンもありました。
また象徴的な事件として、有名な映画監督ロマン・ポランスキーの妻であるシャロン・テート殺害事件もありました。
ヒッピーでは結局ベトナム戦争は止めらず、失望した彼らは社会に戻り衰退期を迎えました。
ジャニス・ジョップリンやジミ・ヘンドリックスが次々ドラッグ死したこともあげられます。

現在でも残るヒッピーの村「ニンビン村」

ニンビン村

1970年代に終焉をむかえたヒッピー文化ですが、まだ当時のように文化が残っている場所があるといいます。太平洋の南国オーストラリアにあるニンビン村です。ニンビン村は山間にある村で、マリファナ(大麻)があちこちで公然と売られていることで有名です。
オーストラリアではマリファナは禁止されていますが、ニンビン村ではそのルールは黙認されています。
最近では世界各国で研究機関によるマリファナの医療効果が報告されてきていますが、ニンビン村では一般の人々がマリファナを自由に入手することが出来ることで、マリファナが健康増進に役立つことが実証されていると言います。
今の時代にもヒッピーは生きていることを、この村では目のあたりにさせられます。愛と平和を求めるヒッピーたちは、この楽園のような島に住みつき、昼間からマリファナを吸いながら愛を歌っています。
この噂を聞いて各地からバックパッカーたちがニンビン村に集まってきています。既成概念に縛られた社会生活とはまったく真逆の非日常の魅力に惹かれて、この村に残る人もいるといいます。
ニンビン村に行った方は、このような理想郷の村がなくならなければいいと語ります。現在までニンビン村に政府の手が入らなかったのは奇跡といえるでしょう。

(H.T)

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