vol.10 「サーカディアンリズム」
食欲の秋。秋になると食べものがおいしく感じるのは、冬に向けて脂肪を蓄え、寒い冬を少しでも暖かく過ごそうという、哺乳類としての本能ではないでしょうか。体重を気にする方も、1年中同じ体重を保とうとするのではなく、食欲の落ちる夏は体重も少なめにして活動的に、冬場は脂肪の層を厚くしてのんびり過ごす・・というふうに、多少の変動があることを当然と考えた方が無理がないと思います。
このように、人間の身体は四季だけでなく、1日のうちにも、時間帯によっても働きが変化しています。「体内時計」というと、陽が登ると目が覚め、夜になると眠くなるというのが代表的な例ですが、人間だけでなく、動植物、菌類や藻類に至るまで、ほぼすべての生命が体内時計である「サーカディアンリズム」を有しているそうです。
私がアメリカで勉強したナチュラルハイジーンという健康哲学は、サーカディアンリズムを身体の生理機能に落とし込み、1日24時間を①4時~12時 ②12時~20時 ③20時~4時 の3つの時間帯に分けました。その上で、それぞれの時間帯を
① 排泄(デトックス)の時間帯
② 摂取と消化の時間帯
③ 同化と利用の時間帯
と定義しました。
4時~12時の「排泄の時間帯」は、お手洗いに行くことだけではなく、老廃物を体外に排出すること。12時~20時の「摂取と消化の時間帯」は食事を摂取して消化すること。20時~4時の「同化と利用の時間帯」は、消化した栄養素を細胞に取り込み、エネルギーとして利用することを指します。
「朝食にはフルーツが適している」という考え方は、現在ではかなり浸透しているように思いますが、「朝フル」の出どころは、実はこのサーカディアンリズムなのです。
なぜ朝はフルーツを食べることが生体のリズムに適しているのでしょう。
4時~12時の排泄の時間帯には、それまで身体の一部だった老廃物を血流やリンパに乗せて体外へと排泄します。このような働きを「異化」と呼び、「同化」とは逆向きの作用です。早朝~お昼頃までは異化の働きが活発になっているのに、何か食べると消化の作業が必要になりますから、異化を妨げてしまうのです。
朝食は食べないか、食べるとしたら消化にエネルギーをあまり必要としない=消化の良いものを食べることが理にかなっている、つまり食べものの中で最も消化の良いフルーツが朝食に適しているのです。
ちなみに、お昼~夜は食事をし、消化をするのに適した時間。夜~翌朝はゆっくり休み、摂取した栄養素を細胞に取り込む(同化)の作用が働きやすくしてあげることが身体の生理機能に即しています。
ナチュラルハイジーンは、一見すると食事法に重点を置いた健康法のようにも見えますが、カバーする範囲は実はかなり広いです。そのため、「欧米に古くから伝わる伝統的な健康法」というよりも、「健康哲学」と説明されることが多いのですが、ナチュラルハイジーンによる食事法は、エドガー・ケイシーによる「ケイシー療法」と重なる部分が意外なほど多いですから、直観的な知恵という要素も多分にあるのかもしれません。
その、広い範囲をカバーするナチュラルハイジーンの要点を短くまとめるならば、「生体の持つエネルギー(生命力)には限りがある。生命エネルギーの多くは消化のために消費されてしまうが、それをできるだけ節約することで、身体だけでなく、心や魂にまでエネルギーが行き渡るようにする。すると自己免疫力が高まり、全体的な健康レベルが上がる」ということだと私は考えています(全然別のイメージを持っている方もいると思います)。
実は、エネルギー栄養学の視点からすると、「生体エネルギーには限りがある」と言う前提は真実ではありません。というのも、私たちの実態は個別性のないエネルギーの海そのものであり、全体である海から、いくらでも好きなだけエネルギーを得ることが可能なのです。
私がかれこれ10年ほど続けている、フルータリアンスタイルの食生活に出会ったのは、ナチュラルハイジーンを勉強したことがきっかけだったということもあり、ナチュラルハイジーンにはとても思い入れがあるのですが・・。
ただ、この話には前段があります。いくら「全体である海から、好きなだけエネルギーを得ることが可能」とはいえ、そのことを意識しているかしていないかで、引き出せるエネルギーの量に大きな差が生まれます。自分自身が無限のエネルギープールであることをどの程度というか、どのレベルからというか、どのくらいの強度で認識しているかにもよります。
私たちの実態が無限のエネルギーだとすれば、食べるものも、食べ方も関係なく、あるいは全然食べなくても水すら飲まなくても、最高レベルの健康状態を常に保てることになります。将来的には、人類はそのような方向に進化していくことは確実ですが、その前段階として、ナチュラルハイジーンの教えに従い、生命エネルギーをケアすることはとても有効だと考えています。
<今月のレシピ>
朝食は食べないか、フルーツを。
(2018.10.16 福田カレン) プロフィール