武田邦彦コラム


人生の意味 -高齢者が運転免許を返納するということ

人生

私は45歳の時に、50歳以降の自分の人生について考えこんでいました。
その時に私は、定年が長い方がいい、年金が多いほうがいい、体がそこそこ丈夫ならいいというのは人生ではないのだ、ということに気が付いたのです。そういうものは死を待つだけの人生です。

1年ほど前に70歳以上の高齢者の運転免許返納という運動がありました。

NHKがあくどいことに、70歳以上の交通事故だけを報道する。
交通事故というのはみんな悲惨なのです。ブレーキとアクセルの踏み間違えによる事故というのは20歳代の人の方が多いのですから、ただ70歳代以上の人をいじめているだけです。そして免許を返納させる。

免許を返納すれば、自動車を運転することが出来なくなるわけです。
その人の人生で生きている意味の中で、たとえばドライブをして好きな所へ行けるということが楽しみかもしれないし、クリーニング屋さんをやってて車を運転しなければ商品を運べないという人もいるでしょう。
そういう人たちから、人生を取り除いてしまうわけです。
「ご苦労さんでした。これからはゆっくりしてくださいね。」というのは、「これからは何もしなくても死を待ってるだけでいいですよ」ということになるわけです。

つまり、人生というのは、体が生きているということだけではなくて、何か人生を送る意味を持っていないといけないと思うわけです。
その意味は、尊いとか尊くないとか、レベルが高いとか低いとかそういうことではなくて、毎日行う楽しさ、心がみずみずしくて感激すること、そして時々苦労も伴うけれどもやり甲斐のあること、これらがあるということなんですね。
つまり人生は、「積極的に生きている人生」と、「死を待っているだけの人生」に大きく分かれるのです。

(2019.11.16 武田邦彦) プロフィール