九州と麻とのつながり
第二次世界大戦前は、日本中どこでも大麻草が栽培され、繊維や食用などの利用されてきたが、九州地域ではどのような利用方法、風習や文化があったのだろうか?
2012年のヘンプカー九州7県ツアーを実施する前に、麻とのつながりで現在わかっている範囲で紹介する。ツアー中に麻に関連した昔ながらの心温まる話題や今どきのホットな話題に出会うことを密かに期待している。
九州7県の大麻草の栽培面積
昭和14年 (1939年) | 昭和30年 (1955年) | |
福岡 | 7.7 | 0 |
佐賀 | 15.9 | 5.4 |
長崎 | 11.4 | 2.5 |
熊本 | 239.1 | 86.0 |
大分 | 46.1 | 19.0 |
宮崎 | 225.2 | 26.8 |
鹿児島 | 16.6 | 0 |
単位:ヘクタール
出典:長野県大麻協会「大麻のあゆみ」
1965,p.26
麻の生産県は、昔から栃木県や長野県が有名であったが、九州地域では、熊本と宮崎で多く生産されていた。
熊本は畳の縦糸、宮崎は麻布の用途であった。
麻の葉が流れてくる川(熊本県)
熊本は畳表のイグサの産地であったと同時に、畳表のイグサ(横糸)に大麻糸(経糸)に使っていたことから麻の生産が行われていた。
何故「熊」「本」なのか諸説があるが、その元になった球磨(くま)は、昔は求める麻と書いて求麻(くま)である。さらに球磨川の由来は、麻の葉の流れ来る見て、麻の葉が流れる川ということで木綿葉川(ゆうばかわ)あるいは結入川、夕葉川と呼ぶようになったという。
この由来を裏付けるかのように、藤原定隆の和歌にこの言い伝えを詠ったものがある。
「夏来れば 流るる麻の木綿葉川 誰水上に禊しつらむ」
大麻草の葉っぱが流れてくる川♪それはすごいです!!
弥生時代を再現した吉野ケ里歴史公園(佐賀県)

麻は縄文時代の遺跡から繊維や種子が発見されているが、九州地域で有名なのは吉野ケ里遺跡である。
今は吉野ケ里歴史公園として開放されている。遺跡から出土した織物には絹布と大麻布があり、大麻布は他に例がないほど細かい糸を用いて織り上げられていたことが確認されている。
大麻布の当時の衣装は、福島県昭和村の織子さんによって復元されている。
天岩戸神話と麻(宮崎県)
太陽の神であるアマテラス大御神が岩戸に隠れたために世間が真っ暗になったという神話を伝える
天岩戸神社が高千穂にある。八百万(やおよろず)の神々による様々な取り組みによって、ついにはアマテラスが表に出てくるが、二度と入らないように、天岩戸に注連縄(しめなわ)を張ったことから、
今日の神社の注連縄が重宝されている由来となっている。
注連縄は、今では稲藁でつくられているものも多いが、邪気を祓うための幣(ぬさ)の素材である精麻(せいま:麻茎から取った繊維をきれいにしたもの)を使うことが古くからの習わしである。
麻栽培加工で人間国宝のいる里(大分県)
日本では、麻を栽培して繊維をとる技術に1)発酵方式、2)煮る方式、3)蒸す方式の3つがある。
このうち比較的西日本で実施されていた3)の蒸す方式は、麻栽培がほとんどなくなってしまった今となっては廃れてしまった技術である。
しかしながら、この技術を唯一継承している方が大分県大山町にいて、しかも人間国宝に指定されている。この方がつくった麻繊維は、伝統的な織り物である久留米絣の絣の模様をつけるための紐として今でも用いられている。
郷土料理けんちん汁は麻の実入り(鹿児島)
「けんちん汁」は、豆腐を麻の実や笹がき、ごぼうなどと一緒にごま油でいため、それを実とした「すまし汁」である。元々は、鹿児島の郷土料理でしたが今では全国区の料理となっている。

巻織汁(けんちん汁)の作り方
材料:豆腐、牛蒡、人参、椎茸、大根、麻の実、里芋、海苔、胡麻油、醤油、酒
豆腐の水分を取りおたまで適当にちぎり、切った牛蒡、人参、椎茸、大根と共に鍋に入れる胡麻油で中火で10分位焦げつかないように炒め、麻の実を途中で入れる。
炒めた材料に出汁(醤油、酒、水)を入れ、中火で里芋が柔らかくなるまで煮込む、最後に海苔をふる。
日本の大麻研究のメッカ、大麻草の生合成経路を解明!(福岡県)

九州大学薬学部は、1970年代から大麻研究が盛んなところである。
いくつかの成果を羅列してみると、
・マリファナ成分が全く入っていない大麻草を佐賀県で発見
・その大麻草を利用して、無毒大麻とちぎしろという品種育成に協力
・マリファナ成分であるTHCやCBDなどの合成経路を世界で初めて解明
・大麻草の植物体内でマリファナ成分をつくる酵素などのタンパク質構造を解明
・大麻成分に植物細胞や動物細胞の細胞死を促すことを発見
(大麻草が雑草や虫に強い理由が科学的に明らかになった)
大麻草は毒草という視点で研究しているのが残念なところだが、世論や法律が変わって、研究テーマも変わることを期待したい。
(※右写真は久留米かすり)
オランダ・モデルは採用されない?(長崎県)
江戸時代の鎖国時に交易の窓口となった出島。ハウステンボスをはじめとした今でも長崎とオランダと結びつけた地域興しが模索されているが、オランダ・モデルの導入を特区ですることは、過去に検討されなかったのだろうか?
売春合法、マリファナ合法、同性婚合法、警察・公務員ストライキ権ありと、多民族・多文化の寛容な政策は、社会実験として大いに価値があると思われる。
文責:赤星栄志
ヘンプカー・プロジェクト - アサノハ